インフラとしてのびおソーラー

地域の一隅を照らす工務店を応援したい佐塚です。

昨日の続きです。
昨日は、安心して継続的に使えるインフラとしてのiPad(というか、Apple Pencilかな)に触れました。

いくらいい製品でも、永遠にそのまま使い続けることはできません。
形あるものはいつか壊れる、という物理的損耗の他に、iPadなんかだと、新しいOSが提供されなくなった、などの、人為的終焉を迎えさせられることがあります。
そうした終焉を迎えた時に、どうしたらいいのか。

選択肢としては、大雑把に言えば、修理して使い続けるか、交換するか、その製品の使用を諦めるか。

iPadとApple Pencilの場合は、交換する、ということが継続的にできそうになったので、私の中ではインフラ的認定をしたというわけです。

さて、本題の「びおソーラー」。これは、手の物語が提供している、いわゆる空気集熱式ソーラーです。集熱パネル、ファンボックス、ダクトなどを建築に組み込んで、冬の集熱や夏の夜間外気取り入れなどに働きます。

と書くと、冷暖房設備のように捉えられることが多いのですが、エアコンなどと違って建築に一体化したやり方です。建築に一体化している、ということは、建築の寿命と限りなく近く運用できなければいけません。

スチュワート・ブランド の『HOW BUILDINGS LEARN』には、それぞれ寿命、というか時間的尺度の異なる6つのSの層からなる、というくだりがあります。

スチュワート・ブランドが示した6つのSの層。

時間的尺度が長い順に、
(1)敷地(SITE)
(2)構造(STRUCTURE)
(3)外装(SKIN)
(4)設備(SERVICES)
(5)空間設計(SPACE PLAN)
(6)家具調度(STUFF)
となっています。

1.敷地は、動きませんから、たとえ建物が建て替わっても同じです。これが一番時間的尺度が長いのはすぐわかりますね。
2.構造は、その名の通り、建物の骨格であり、その建物がある限りは使い続けられるものです。もちろん、年数が経過したものを補強したり、増築、減築ということもありますが、その時間的尺度はかなり長いですね。
3.外装は、建築場所によっては劣化が早かったり、あるいは利用者の好みなどでやりかえることがあります。とは言え、数年で、ということはなかなかないでしょう。屋根や外壁なんかだと、20年ぐらいでしょうか。
4.設備。住宅だと一番イメージしやすいのは、エアコンや給湯器といったものでしょう。これらが使われるのはだいたい10年前後、もっと長いものや短いものもあるかもしれません。(我が家の給湯器は22年もってくれました)
5.空間設計。これは住まい手次第、というところもありますが、たとえば家族が増えたり減ったりして吹き抜けを塞いで部屋を増やすとか。子ども部屋を個室に区切るとか。店舗や事業所だと、住宅よりさらに時間的尺度が短めに思います。
6.家具調度。これは極めて短い時間的尺度のもの。身の回りのいろいろなものです。

さて、びおソーラーは、4.設備か、と言われると、概念的にはそれに近いものはある一方で、集熱パネルの一部は屋根に一体化していますので、少なくとも3.外装に、できれば2.構造に限りなく寿命が近くないといけないと思います。
そのために、先に挙げた可動部であるダンパーとファンには、それぞれ汎用製品を使っています。三菱とかパナソニックなどが提供している汎用品で、もう長い間、同一寸法の製品が提供され続けています。これらがなくなると困る人が大量にいるから、メーカーも製造し続けているし、万一これらの大手メーカーが製造をやめたとしても、ジェネリック製品が生まれてくるかもしれません。というわけで、これらは継続的に供給され続ける、すなわち可動部分の「部品がありません」「修理できません」を起こさないように、という考えです。

ファンボックスの裏のカバーを外すと…

ファンが取り出せます。これは汎用のファンなので、容易に手に入り、この先もおそらく永く供給され続けるはず。

設備メーカーは、たいてい、修理して使い続けられる、というようなことをうたっているものですが、日本の場合は、実際には製造が終了すると、補修用性能部品の最低保有期間が終われば、もう治せない、というケースが多いです。仮に部品を保有していても「治すより買った方が安い」「買った方が早い」ということがよくあります。

ちょっと大仰に言えば、修理して使い続ける、という文化自体がこの国には希薄なのですね。
メーカーに丸投げし、メーカーが無理ならもうお手上げ、という家ばかりが増えていいのか?
あなたが選んでいる色々なモノは、この先ずっと使えるものなのか?

というわけで、Apple Pencilとびおソーラーをインフラと言い張るのは強引かもしれませんが、長く継続的に使い続けられる、という点が共通点です!