「ファスト風土」に飲み込まれない住まいを

もう一回だけ和歌山でのお話。
和歌山にヒントをもらって
ちょっと違う視点で。

和歌山市には
「ぶらくり丁」という
商店街があります。

かつては、人と人とが
肩を当てながら歩くような
栄えた町だったそうですが…

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地域をよくする工務店を
応援するネットワークの
佐塚です。

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現在はこんな感じ。
(朝早かったから
ちょっと卑怯な写真ですけど)

和歌山市には、南海和歌山市駅と
JR和歌山駅という二つの
ターミナルがあります。

ぶらくり丁は、そのどちらにも
隣接していません。

電車でも行きづらく
車では駐車料金がかかる

そんなことも衰退の
一因なのでしょう。

商店街は衰退して郊外に似たような
チェーン店が立ち並ぶように
なりました。

そういう風景を「ファスト風土」
と名づけたのは三浦展さんです。
もう20年ほど前のこと。

今年でた三浦さんの新刊
『再考 ファスト風土化する日本』
によれば

ファスト風土世代にも
第一世代、第二世代があるといいます。

商店街の全盛期を知っていて
ファスト風土化が始まったことを知っている
40代ぐらいの世代が、第一世代。

すでにファスト風土が原風景だった
現代の若者が、第二世代。

第一世代と第二世代の美意識は
異なっています。

第二世代はそれが当たり前に
なっていて問題意識を持たない
のでは、と。

僕は第一世代より少し上。
言わんとすることはよくわかります。

ごくたまにショッピングモールに行くし
ごくごくたまにファストフードを
食べることもあります。

でも、ファストフードを毎日
食べたいかと言えば、絶対に嫌ですね。

食べ物は、自分で
食べる、食べないを選択できます。

であれば、ファスト風土以外の
選択肢も存在し続けるべきだ、というのが
著者の主張です。

ファスト風土の街に住み続けるのは
毎日ファストフードを食べるようなもの…

街は社会を具現化したものなので
僕らの社会はそういう方に進んでいる
ということなのでしょう。

それを当たり前にしておくと
住宅もやがてはファスト風土に
飲み込まれてしまうのでは。

現に、「マイホーム」の
「マイルーム」から
「マイカー」でどこかにいくので

家の周りの風土なんか
関係ない

という風になってきている
ように感じませんか?

住まい手もこれからは
ファスト風土第二世代が
増えていきます。

多くの工務店の経営者は
第一世代以上です。

世代間の美意識に
ギャップがありうるという
ということ。

風景だのなんだのという
言葉が全く響かない層が
メインターゲットになっていく…

なんと恐ろしい、と思ったけど
実際には第一世代以上でも
そういう人は多いですよね。

結局のところは
いいお手本を作って
「ほら、いいでしょう」

見てわかってもらう
ということしかないのかな。