『フードスケープ 』を勝手に必読図書とします

前職から引き続き
いくつかの工務店さんが進めている
まちづくりの仕事に
関わらせていただいています。

近い価値観を持った人が集まって
住むということは
ある程度のコミュニティもできて
防災上もいいかもしれないな…

なんてことを考えたりしますが
原点は風景を作る、というところに
あるのかな?

今回紹介する本

Foodscape フードスケープ
図解 食がつくる建築と風景

正田 智樹 著 
学芸出版社 刊

まちづくりの本ではないですが

建築が関わって風景を作る

という点では共通しています。

フードスケープ

というのは、
foodとlandscapeの造語

本書のサブタイトルに
「図解 食がつくる建築と風景」
とあるように

まさに食(food)と風景(landscape)に
建築が関わってくる
そんな話です。

本書の定義では

食をつくることは
原材料が食べ物になるまでの
材料の変化の連続

その工程には
道具や人、そして建築が必要

工程に関わる道具や規模
建築は時代と場所で変化するが
工程そのものは変わらない

工程の中に、地域のポテンシャルを
活かして材料を加工する
エコロジカル治具が存在する
(柿を吊るす干場のような)

エコロジカル治具が
地形に応じて適切に配置されて
作られる風景を
フードスケープと呼ぶ

ということに
なっています。

イタリア、日本のいくつかの
フードスケープが紹介されていて

写真を見るだけでも
ほっとするような美しさが
感じられますが

本書で大事なのは
バレーセクション(断面図)
かもしれません。

地形と工程と建築との
関係が一望できます。

以下、amazonの紹介ページにある
出版社から、という
写真を引用させていただいています

イタリア・アマルティのレモン

日当たりと風通しをよくする
パーゴラと
水はけをよくする石積みの段々畑

レモン栽培から
レモンチェッロ(レモンの酒・僕大好き)
の生産までが
フードスケープを作っています。

まちづくりをするときに
そこが単なる家がたくさんある場所なのか
人の営みが見える場所にしたいのかで
まるっきりスタート地点が違うわけですが
(そしてほとんどは前者になっている)

本書で紹介されているような
規模ではなくても

その土地の特性を活かした
農作物の栽培と加工
(栽培だけではないのが重要)

そういう要素がまちに入ってくると
圧倒的に活き活きしてくるな〜と
改めて感じました。

家庭菜園的なスペースを
置いておくことは増えてきたけれど

加工のためのエコロジカル治具が
存在してこそ
そのまちのアイデンティティに
なるんじゃないかな?

区画割された宅地に
家を建てる仕事には
関係ないと思うかもしれませんが

小さい規模でも
できることはあるはず。

著者は
建築家の塚本由晴さんに師事した
正田智樹さん。

塚本さんと正田さんの対談も
収録されています。

そこには、建築を生業にする人が
農的なことに関わることの意味が
記されています。

まちづくりを志している
工務店の必読課題図書に
勝手に決めました。

ぜひご一読を。