金山町では益子義弘さんによる
金山町火葬場も見学させていただきました。
人生で最後にお世話になる建築
どういうことを考えて
作られたものなのか。
火葬場は日常利用する場所ではないし
まして設計をする機会は
そうあるものでもありません。
火葬場が町の端にあるのは
単に人口が多いところには作りにくい
そういう理由もあるのだろうけれど
益子さんはこの場所が
金山の「結界」のようなところだと
言われていました。
この火葬場は2021年に
JIAの25年賞を受賞しています。
竣工時にはまだそれほど大きくなかった
杉林は、今はうっそうとしています。
建築は航空写真からはよく見えません。
益子さんの描かれたスケッチが
飾られていました。
これで少し様子がわかるでしょうか。
まもなく30年近く
この金山町で人々のお別れの場所に
なってきたし、これからも
そういう大切な場所であり続ける
そんな場所です。
ここでは、一度に一人だけしか
火葬ができません。
人口の少ない自治体では
火葬場がなくて近隣と共通
そんなケースも少なくありません。
大きな火葬場では
火葬もルーチンワークとして進み
同時に知らない人の火葬も並行
していたりします。
それが当たり前だと僕も
思っていましたが
この金山町火葬場では
お別れの時間に故人を偲ぶ
その時周りにいる人はみんな
同じ人のお別れに来ている人だけです。
一人だけを送る、というのは
設計者の意図というよりは
クライアントの要望なんでしょうけれど
その時にいらっしゃる一組のために
作られた優しい場所で
ここで焼かれるなら死んでもいい
なんて思った人もいるんじゃなかろうか…
以前、田瀬理夫さんと
益子さんの事務所を訪れた際
この火葬場の模型を前に
お話しした時の写真がありました。
その時は見に行く機会があるとは
思っていなかったので
改めて、今回ご案内いただき
ありがとうございました。
益子さんは、裏磐梯のホテリ・アアルトの
お仕事でも
環境と対話し、環境とうまく結んでいく
そんなことを言われていました。
密集地に建つ一般住宅と
森の中に建つ非住宅とでは
もちろん違いがありますが
住宅はできるだけ環境から
遠ざかるように
遮断することが
いいことだ
そんな風潮がとても強く
僕はそれを苦々しく思って
こういうところで
文句を垂れるばかりだけど
益子さんのように
それを言葉で否定するのではなく
実作が静かに語ってくれると
とても心強い。
環境を読んで環境と結ぶ。
そういう意識を持って
住宅にも接していかないとね。