「具体的な話」だけだと良くならない


佐塚です。仕事柄、工務店の経営者の方とよくお会いします。

地域も規模も違うし、同じ会社は二つとしてないわけなので、悩みも同じではありません。
同じではないけれど、共通点はあります。そういう共通点の発見が抽象化なのでしょう。でも、なかなかそれができません。

過日、続けて二人の工務店経営者に会いました。ブログに書いていいよ、とは言われていないので、それぞれの具体的な悩みは書きませんが、まさにその「具体的」というのが落とし穴だなと感じました。つい、お話をしていると、こちらも具体的な対策を思い浮かべて話してしまったりするのです。一見いい話になったようで、それは本当に悩みの解決になるのだろうか、とも思うことがあります。

町の工務店ネットは発足して16年になります。その間行ってきたことの中で、人気のある取り組みは、「具体的」であり、「真似たらうまく行くような気がする」ものだったかもしれないな、と振り返っています。
町工でやるものに限らず、勉強会なんかでも、「具体的にお伝えします」というのが金科玉条のように扱われている。
ある一日学んだ具体的なものは、たまたま同一条件の事柄に対して役立つかもしれないけれど、そういう機会がないと使えないかもしれない。と、ここまで極端な「具体的」は、そうそうないかもしれませんが。

勉強会などに限らず、「もっと具体的に言ってくれ」みたいなことを言われることがあります。そんな時に、その場を収めるために具体的な話をしてしまいます。そうすると、次もまた同じようなことの繰り返しになってしまいます。
目の前のことは解決したように見えるかもしれませんし、会社経営っていうのはそういうもんだ、と言われると、そうかもなあ、と思ってはしまいます。けれど。

建築家の伊礼智さんは、設計の標準化、ということをずっと言われてきています。それは一見、具体的な事柄かもしれませんが、設計の標準化、ということは、本来、抽象化に価値があるものだと思います。他社を訪問して勉強会をするのは、他者の部分的なことを真似るため、ではなくて、他社の在り方、行いを抽象化して理解し、自社の標準の中に入れられるかどうかを吟味する機会、と捉えて行きたいな、と。

標準化、抽象化というのは、(工務店に限らず)経営に一本筋を通すものだと思いますが、そのお手伝いが本当にできているのか。なんてことを悩む一日でした。

と書きながら、現在、具体的な勉強会のことを企画しています。それが結果的に経営の抽象化につながるよう頑張ります。