飯の「経験数」と住まいの「経験時間」

おいしい建築」なんていうからには
おいしいものを食べなくては…

というわけではなくて
僕は純粋に料理が好きで

食材を買うのも好き
食べるのも好き
作るのも好き
調理道具も好き

先日わけあって作ったジンジャーシロップ
二番煎じで

イワシを煮てみました。
(頭を落としたものしか
売っていなくて残念…)

こんな感じで日々料理を
楽しんでおりますが

あと何回料理できるかな〜
なんて気持ちに
なることもあります。

敬愛する作家
山田風太郎さんの
晩年のエッセイ集

『あと千回の晩飯』

ご本人が、漠然と
晩飯を食うのも
あと1000回ぐらいかなあ…
と、したためています

1000回というと
毎日晩飯を食えば
3年弱

(山田風太郎は
この後もう少し長生きしたので
もっと晩飯を食ったはず)

1日3食きっかり食べれば
1年の食事の回数は
1000回ちょっと

10年で1万回と考えると
飯の回数は数十万から
長生きすれば100万回超え

これに対して
家づくりはたいてい一生に1回
多い人でも3回ぐらい
かなあ?

仮に30歳ぐらいで家を建てるとして
そこまで食べてきた食事は
約30万回

30万回のメシの経験と
たった一回の家づくり経験を

アナロジー(類推)だ!
というのは強引だと
思われるかもしれませんが

どんなお客さんだって
注文住宅を依頼するのは
はじめてでも

家にはずっと住んでいる

NHKの調査データで
平均の在宅時間は66.85%
という数字がありました

家だけでなく
建物の中にいる、という時間まで
入れると9割という説もあります。

建物の利用者としての時間は
メシを食っている時間よりも
ずっと長い!

家をつくる、ということは
住まい手さんにとって
一世一代の事業ではありますが

その下ごしらえは
それまでに暮らしてきた生活
そのもの

味の嗜好以上に
違いが出るかもしれない。

夫婦の双方の家庭が
あまりよい住環境で
育ってこなかった場合

選択する家は、安普請というか
なんでもいいや、となってしまい

夫婦のどちらかが
豊かな住環境で育った場合は
まっとうな家を求めようとする

そんな傾向を感じます。

つまり、
きちんとした家を
作っておかないと

将来、そういう家を求める人が
少なくなってしまう
ということ

こりゃ大変だ!

次世代の経営者たちのためにも
「おいしい家」を
のこしていきましょうね。