読書「日本列島四万年のディープヒストリー」


佐塚です。
読書はもっぱらノンフィクションが多いですが、最近はついつい仕事に絡めて読んでしまいます。もっと自由に知的好奇心を広げる方がいいよなあ、と思いながら。


現生人類である私たちがこの地球上の寒帯から熱帯まで広がることができたのは、集団生活のチームプレーの力とともに、文化の力によるところが大きい。

と聞くと、ついつい、ここでいう文化とは、風雪に耐える建物のことだな、と先読みしてしまうのだけど、例に挙げられているのは「針」。
後期旧石器時代に重要だったアイテムは針、縫い針なのだという。じゃあ衣食住の衣か、とまた早合点するが、衣でもあると同時に、住もまだ、この頃はテントのような住居に毛皮を縫い付ける、ということもあった。
環境適応のために身体を変えた他の動物と違って、文化の力で環境適応をしてきたのが人類だ。
それでも、食料、集団生活上の不和や争い、風水害、汚穢を避けるなどの理由で移動生活が人類の基本だった。定住が定着するのは、気候が安定したことと、農耕が生み出されたことによるものが大きい。

結局のところ、人が環境に適応できたのは社会性があったからで、社会性があるからこそ文化が伝承できたわけだ。今、僕らは社会に生きてはいるが、社会の構造は多層化していて、隣人と自分は同一のレイヤーにいないのかもな、ということが多い。家族の中でもそうだろう。
とはいえ、見たこともない誰かが作ってくれたものを買うことだって社会の中での文化享受だ。ただ、そこには社会をより良くするためのコミュニケーションはないよなあ、と感じる。

本書は「先史考古学からみた現代」というタイトルが付いているだけあって、過去はこうだった、と語るだけのものではない。現代のコミュニケーション方法として、リモートワークの話題なども出てくる。

文化の古今東西を俯瞰して、現代でのコミュニケーションの大切さを改めてつかむためのいい本だと思った。