住宅価格指標を見れば、待ったら安くなるなんていえない

昨年の新設住宅着工数のうち
持ち家は22万4352戸で前年比11.4%減

2022の年も二桁減だったので
「新築がとれなくなった」
という声が聞こえるのも
むべなるかな

好調な工務店もありますから
全体が沈下しているわけでも
ありませんが

家が建ちにくくなっている
理由の一つに
「価格高騰」といわれる
現象がありますね。

いちいち「いわれる」
と書いたのは
これが本当に「高騰」なのか?

と思っているからです。

検討が進んでいたお客さんが
予算の都合で断念する
という残念な事態は
今も昔も必ずあるわけですが

これが「予算に合わなかった」
ではなく
「今は価格が高いから少し待つ」
という人もいらっしゃるようで

今回は、そういう人に対して
「待っても安くならないと思うよ」
と言いやすくなる材料を
客観的に提供してみます。

↓このグラフは

住宅金融支援機構・フラット35利用者調査(所要資金)
国土交通省・不動産価格指数(戸建住宅)
国土交通省・建設工事費デフレーター(木造住宅)

3つの建築価格の指標を
それぞれ2011年を100とした場合の
変化を表したものです。

支援機構の「所要資金」は
支援機構で借りた額に関わらず
土地+建物の費用の合計です。

各年度毎の、全国の所要資金の
平均値をプロットしています。

不動産価格指数は、原則として分譲住宅の指数です。
(土地と建物を一緒に取引したものの値)

他の統計と違い月次で報告されます。
やや投機的な指標と言えるかもしれません。

各年の12月の値をプロットしました。
このため1年の中での
細かい価格変動は反映していないので
ご注意ください。

国土交通省・建設工事費デフレーター
「名目工事費額」を「実質額」に変換する指標です。
工事額に物価変動などを加味した値
とでも言えばいいのか。

このうちの、木造住宅の値をプロットしています。

今更いうまでもないでしょうけれど
こうしてグラフを見てみると

東日本大震災のあった2011年以降
住宅価格は下がったことなどない
とはっきり言えるのでは。

(不動産価格指数は分譲住宅という
「商品」の推移なので
供給過多だったりすると下がることも
ありますが、それでもほぼ右肩上がり)

これに、消費者物価指数
(いろんなものの値段)と
国民生活基礎調査
(世帯の平均所得金額)を
プロットしてみると…

(生活基礎調査は年度によって
欠落があるのでグラフも飛んでいます)

やっぱり住宅の値上がり率は高い
そして所得は全然追いついていない

と、大変厳しい値ですので
大っぴらに振り回すと
逆効果かもしれませんし

2024年問題もあって
家を安くつくるということは
ますます難しい時代に…

とはいえ需要がいきなり
半分になってしまうわけでもないし

所得がある程度あるのに
価格高騰を理由に建てない
そんな方への材料として
使い道が…ある…かな?

まあ、統計なんてどう組み合わせて
どう見せるかで見え方違うしね!

同じデータを元にしたグラフでも
縦軸の範囲を広げてやれば、この通り↓

そんなに激しく上がっているようには
見えない、かも。

なんていうトリックはともかく
グラフと元の数値は
Googleスプレッドシートで
公開しました。

住宅価格の推移
メイン 支援機構 所要資金,住宅金融支援機構,不動産価格指数 12月,不動産価格指数,デフレーター 木造住宅,建設工事費デフレーター,消費者物価指数,消費者物価指数,国民生活基礎調査,国民生活基礎調査 2011,3,265.50,100.0...

各指標は2011年を100としていますが
非表示セルに元の値も入っています。

コピーやダウンロードなどして
自由に使っていただいて構いませんが
もし入力値に誤りなどあった場合の責任は
取れませんので予めご了承くださいね。