物価目標と家の価格と広告の価格

日銀が「2%到達」と言った。なんかおかしいな、と建築費の統計を調べてみました。定点観測と言いたいところだけど、思いついたときの観測。


日銀で、物価目標の2%に到達した、という話が出たんだとか。

2013年1月に掲げてから、約14年。 ニュースを見て、なんかおかしいな、と思いました。

というのも、生鮮食品を除く消費者物価は、2022年から4年続けて、年平均で2%を超えているからです(+2.3%、+3.1%、+2.5%、+3.1%)。

今さら到達と言われても、という感覚です。

日銀が見ているのは、一時的な要因を除いた「基調的な物価」のほうで、そちらが2%と「おおむね整合的」になった、という判断のようです。

エネルギーや食料の値上がりではなく、賃金上昇を伴いながら、持続的に物価が上がっていく状態かどうか、を見ていたのかな〜、と僕は理解しています(間違っていたら、日銀の展望リポートが正)。

というわけで、本題へ行こう。

住宅の値段は、ほかの物価と比べて、どうなんだろう?

国土交通省に、「建設工事費デフレーター」という統計があります。 工事にかかる原価(材料、賃金、サービス)を指数にしたもので、木造住宅の系列もある。 以前、この統計を含む指標を、2011年を100にして並べた回がありました↓

2011年比、2020年比、2022年比でみるフトコロと住宅価格
住宅は元々高い、それがさらに高くなった、故に売れない…ってのはホントなのかどうか。近年の他の指標と比べてみました。

今年の4月分から基準が2020年度に変わったので、今回は2020年度を100にして見直します(数字は前回と少し違います)。

2021年度が110.3。たった1年で+10.3%です。
その後は、2022年度が116.7、2023年度が114.8、2024年度が118.8、2025年度が122.3(2024・2025年度は暫定)。

2020年度からの5年で+22.3%。同じ期間の消費者物価(総合・年度平均)は+12.4%なので、ほぼ倍です。

グラフにすると、こう↓

ただ、よく見ると、差がついたのは最初の1年でした。
2021年度にいっぺんに上がって、そのあとは物価全体と似たペースで進んでいる。

2021年度から2025年度だけ見ると、工事原価が+10.9%、消費者物価が+12.3%で、むしろ物価のほうが少し速いぐらい。

国交省の資料には、2021年度の上昇と2023年度の下落は、木製品(住宅建築用の木製組立材料など)の価格が主な要因、とあります。
もっとずっと離れていると思っていたので、ここは意外でした。

次に、今年の前年比を並べてみます。

木材の企業物価が+9.4%、木造住宅の工事原価が+5.6%、名目賃金が+3.8%、消費者物価のコアが+2.1%。

こうして並べると、材料価格の上昇が目立ちます。
住宅全体の原価は、それより緩やかな上昇にとどまっている。

ただ、材料価格の上昇が、どこまで住宅の原価に反映されているのかは、この数字だけではわかりません。仕入れのタイミングも違えば、工務店側で吸収している部分もあるでしょう。

少なくとも、材料価格の動きは、まだ気にしておいた方がよさそうです。
(公表月も指標の性質もバラバラなので、単純比較はできません)

「住宅の高騰」と言うけれど、戸建とマンションでは、だいぶ違う話のようです。
国土交通省の不動産価格指数で、2024年3月から2025年12月を見ると、マンションが+13.7%、戸建が+5.3%、住宅地が+2.1%。

同じ期間の木造住宅の工事原価は+5.6%。戸建住宅の取引価格の上昇率と、数字だけ見れば近い水準です。

高騰の主役はマンション。工務店が建てる戸建は、ほどほど。 (ただし、取引価格は中古・土地込みで、新築の建築費とは別物だし、他ならぬ工務店自身も、高騰はもちろん実感しているんだけど)

もうひとつ、建築着工統計というのがあります。
着工の届出に書かれる「工事費予定額」を床面積で割った、1㎡あたりの単価です。

持家の木造一戸建て(全国)だと、2015年が17.6万円、2020年が18.5万円、2022年が19.1万円。
それが2023年に22.6万円、2024年は24.6万円になっています。
2020年から2024年で+32.4%。2022年から2023年の1年だけで、+18.5%です。

原価がいちばん上がったのは2021年度で、予定額が上がったのは2023年。

2年ほど遅れて、金額に出てきたように見えます (推測ですが。工事費予定額は届出時の予定額で、実際の請負金額ではないし、仕様や面積の変化も混ざっているはず)。

前に「物価高は住宅にやや遅れて来る」と書きましたが、着工の金額は、もっと遅れて来るのかもしれません。

ちなみに、1戸あたりの床面積は、2020年の116.8㎡から、2024年は112.3㎡に減っています。

原価が上がったことと、値段に載せられたことは別の話で、しかも、載るまでに時間がかかる。
デフレーターの原価には、営業余剰、つまり利益が入っていません。 利益は、この数字の外にある。

うーん、明るい話にはなってないなあ…

ひとつだけ探すなら、賃金です。実質賃金は8月まで8カ月連続でプラス。8カ月以上続くのは約10年ぶりだそうです。
家の値段との比較までは、まだわからないけれど、向きは悪くない。


で、僕の話。
僕の仕事には、定価がありません。 工務店の定価がない話は、前にも書きました↓

値上げで惚れられる?
他責の時代に「努力不足」と謝って、感謝の声まで出たサイゼリヤ。小さい工務店は、まだ会えない人にどう伝えるか。

だったら相場に合わせようか、と思ったんですが、そもそも相場って何だろう。

日銀の企業向けサービス価格指数(企業どうしが取引するサービスの価格)は、2026年9月で前年比+3.7%。国際運輸を除いても+2.9%です。

ところが、その中の「広告」だけは-5.2%。テレビ・ラジオ広告が-11.7%、ネットや新聞などが-1.0%。
相場、下がってたりして、なんて冗談のつもりだったのに、本当に下がっている項目があった。

一方で、名目賃金は+3.8%、物価は+2%前後。 同じ金額のままなら、実質的には目減りしている、ということになります。
でも、広告が下がっているから僕も下げる、というのも筋が違う気がする。
そもそも、僕が売っているのは、枠ではなくて、判断のほう、だと思っているので。

相場に合わせよっかな、と言いながら、合わせる相場がどこにも見当たらない。
価格というのは、原価の積み上げではなくて、価値の提示、なんだろうけど。
工務店には「価格の目安を出しましょう」と言い続けてきたのに、自分の定価は、やっぱり決めていないんだよなあ。
お前が言うな、というやつです


最近、グラフとかをアニメーションにするのが好きなんですが(AIクソグラフ…とか言わないで)、今日のグラフも、アニメにしてみた↓

グラフが動いて注意書きとかが出ると、ライブ感というか、学校の授業みたいでいいなあ。
グラフだけあれば成立していて、文章はおまけのような気がしてきました。
伝えるって難しいね…余談ですが。