地図はくれた。目的地はくれなかった。

総務省の統計が出たのでAIに市場調査をさせてみた。データはちゃんと出てくる。でも「どんな会社でありたいか」という問いには、市場データは答えられない。地図は「どこに行けるか」を示してくれるけれど、「どこに行きたいか」は示してくれないのだ。


先日、総務省が「日本の統計2026」を出しました。

統計大好きの僕としては、いいネタだ〜と思って飛びついたんですが、住宅関係だと、もう何度も書いたようなネタになってしまいそうで(夫婦と子ども世帯は実は少数派とか、空き家率とか)。

市場の状況を認識しておくことは必要だと思うので、統計のことをしょっちゅう扱うわけです。

ただ、最近は、この市場の認識をAIにやらせよう、という気運が高まっているように思います。

んじゃ〜、架空の市場調査、AIにやらせてみましょう。
ちょうど先日、入社した途端に数日休んだ(過負荷で落ちた?)Claudeちゃんに、汚名返上の機会を与えてみようじゃないか。

架空の市場調査

プロンプトとか詳細は割愛しますが、大体こんな感じのことを返してきました。

市場は浜松市、工務店像は架空です。

工務店像は
断熱等級6、耐震等級3、平屋、自然素材が売り(悪くはないけど、売りポイントが平凡だな…)
平均単価は3,500万円、年間棟数6棟、強みは設計提案力、建てた後のメンテナンス(これは本当なら強力な強みだと思うけど、お客さんに伝わるかな…)

さてどんなことを吐き出してくるか。
データがあっているかは分かりませんので悪しからず。

商圏の規模

商圏として設定した浜松駅から1時間圏内ぐらいには、人口約132万人。
人口減少速度は-8%で、全国平均の-4.4%よりだいぶ高い。

3500万円の家を建てられるか、という問いに対しては
40代になると平均年収がグッと上がる。50代はそんなに変わらない。
30代の平均年収に対しては、浜松だとちょっと土地が高くてキツい
磐田・袋井ならまあまあいける
みたいな感じ

年間の住宅需要推計は23,30戸 6棟だったら0.26%のシェア。

浜松市の75歳以上人口は13万人超、今後10年でこの層が相続・住み替えを起こす。
OBの子世代へ先回りアプローチをしろ、と。

メンテナンスが強みだったら、定期点検から建て替え相談への流れが最も費用対効果が高い施策のひとつ。

うーん、まあ、こんなの言われなくてもわかってるかな…?

他にも、強みをどうアピールする、とかも提案してくれたりはします。

お、これは僕も失業のピンチかな? と思ったけど、すげ〜つまんない提案だった。ちょっと安心。

ポジショニング

特徴も「断熱等級6、耐震等級3、平屋、自然素材が売り」では、もはや埋没確定。
強みとしてあげた「強みは設計提案力、建てた後のメンテナンス」は、上にも書きましたが、新築希望のお客さんにそこまで響かないかも。

その程度の学習の場合は、AIは「自社が市場内でどんなポジションか」を、ちゃんとは示してくれません。

でも、どんなポジションにいるか、より、どんなポジションにいきたいか、の方が大事な気がします。

仮にAIが、今まで「自然素材と平屋で戦ってきたけど飽和状態だから、3階建て専門に鞍替えした方がいい」と言ってきたらどうでしょう。

それを市場条件だけで判断するのか、会社の持っているポテンシャルで判断するのか。

そもそも、市場が「鞍替えしろ」と言っても、鞍替えしたいかどうかは別の話です。

「自然素材と平屋が好きだからやってきた」という工務店が「3階建て専門に鞍替えした方がいい」というAIの提案を採用したとしたら、その会社はいったい何者になってしまうのか。

市場の隙間に滑り込んだとしても、会社の中身がついていかないのでは。

地図はあっても、目的地がない

AIが出してくれた市場データは、地図みたいなものです。
どこに人が集まっていて、どこが空いていて、どこに需要がある。

地図として見れば、Claudeちゃんはちゃんと仕事をしてくれました。

OBの子世代に先回りしろ、とか、メンテナンスの強みを建て替えにつなげろ、とか。まあ、言われてみれば「そうだよな〜」という話は揃っていた。まあ、そんなことは僕も今まで散々書いてはきたけれど、当たり前の話だよな。

ただ。
地図は「どこに行けるか」を示してくれるけれど、「どこに行きたいか」は示してくれないわけです。

「いる」より「いきたい」の方が、経営の話では大事じゃないだろうか。

AIに聞けない問い

「あなたの会社はどんな工務店でありたいですか?」

この問いに、市場データは答えられません。

いや、AIは強引に答えを出してくることはあります。
でも、それは市場に残っている「隙間」の答えであって、その会社が何に喜びを感じてきたか、とか、何に誇りを持っているか、とかを反映したものじゃない。

変わるな、という意味ではありません。
良い方にも、悪い方にも変わっていった工務店をたくさん見てきました。

でも、どんな会社でありたいか、を見失って変わったケースでは、大きくなってても、幸せそうには見えないけど…

汚名返上、できたのかどうか

というわけで、先日入社した途端に数日休んでしまったClaudeちゃんに、市場調査という名の汚名返上の機会を与えてみました。
データはちゃんと出してくれた。それは認めましょう。

でも、僕には言えて、Claudeちゃんには言えなかったことも多い。
……とまあ、かっこよく言いたいところだけど、クライアントさんの「どこに行きたいか」を引き出すのも、実は結構難しいんですよね。

そういう風に、工務店側が問いかけをしないでいるうちは、僕も失業しないで済むかな…