就職活動で求職者が企業に提出するエントリーシート(ES)、廃止するところが出てきているんだそうですね。
生成AIで似たようなものばっかり提出されるらしく、それでは求職者の良さなんかわからない、ってことのようです。
そんなもの読まされる採用担当者もたまったもんじゃありませんね。
とはいえ、似たようなもんばっかり見せられるのは採用担当者ばかりではありません。
家を建てたい、と思っている人もまた然り、です。
住宅の宣伝文句って、似たようなものばっかりですよね。
なぜか?
家というものの機能が、どれも似たようなものだからです。
そして、機能の自慢をしようとすると、似ちゃうわけです。
空を飛ぶ家とか、変形合体する家とかだったら、宣伝もしやすいんだろうけど、土地の上に建っていて、風雨を凌いで生命財産を守る、という点ではみんな共通なので、似ちゃうんだよなあ…
機能じゃないことを言わなければならないのだ。

似たような住宅の宣伝文句
工務店の場合だと
「Ua値〇〇」「C値〇〇」「エアコン1台で快適」なんてのがよくありますね。
マンションだと「雄大な景色」とか「見下ろす」とか。
他にどんなのあるかな?
AIちゃんに、よく出てくるコピーを羅列してもらいました。

お客さんの気持ちになって、げんなりしながら読んでください。
① 安心・信頼系(もっとも多用される)
- 安心・安全な家
- 一生モノの住まい
- 家族を守る家
- ずっと安心して暮らせる
- 将来も安心
- 何十年先まで住める
- 子どもを守る家
- 災害に強い家
- 地震に強い家
- 強くて丈夫な家
- 長期優良住宅
- 品質にこだわる家
- 見えないところまで丁寧に
- 手抜きしない家づくり
② 性能・数値系(最近急増)
- 高気密・高断熱
- 高性能住宅
- 断熱等級6/7
- HEAT20 G2/G3
- UA値〇〇
- C値〇〇
- 耐震等級3
- 制震・免震
- ZEH
- GX志向型住宅
- 省エネ住宅
- 光熱費を抑える家
- 冬暖かく夏涼しい
- 年中快適
③ 自然・素材系(情緒に訴える)
- 自然素材の家
- 無垢材の家
- 本物の木の家
- 木のぬくもり
- 呼吸する家
- 体にやさしい家
- 化学物質を使わない
- 健康住宅
- シックハウス対策
- 国産材使用
- 地元材使用
- 天然素材
- 漆喰の家
- 珪藻土の家
④ 人・姿勢系(人格を売る)
- 顔の見える家づくり
- 職人の技
- 大工がつくる家
- 手仕事の家
- 丁寧な家づくり
- 誠実な家づくり
- まじめな家づくり
- 妥協しない
- 本気の家づくり
- 想いを大切に
- お客様第一
- 一棟一棟大切に
- 家づくりが好きな工務店
⑤ 地域・関係性系
- 地域密着
- 地元工務店
- 創業〇〇年
- 地域に根ざした
- アフターフォロー万全
- 建てた後もお付き合い
- 何かあればすぐ駆けつける
- 地元だからできる
- 一生のお付き合い
- OB施主との関係を大切に
⑥ 価格・合理性系(言い切らないのが特徴)
- 適正価格
- コストパフォーマンス
- 無駄を省いた
- 価格以上の価値
- 大手より安い
- 中間マージンなし
- 自社施工
- 宣伝費をかけない
- モデルハウスを持たない分
- ちょうどいい価格
⑦ 暮らし・感性系(最近の主戦場)
- 暮らしをデザインする
- 心地よい暮らし
- 自分らしい暮らし
- 豊かな暮らし
- 永く愛せる家
- 飽きのこないデザイン
- シンプルな暮らし
- 住むほどに味わいが増す
- 家が人生を変える
- 家族の物語が始まる場所
↑このリストは、体裁を整える以外には一切手を加えていません。
つまりこれらの言葉は使い古されている、いわば「手垢のついた言葉」です。
(手垢のついた言葉、って表現にも、手垢がついています)
まあ、たくさん似たようなものがありますね。
僕も、使ったことあるかもしれない。
実は雰囲気だけしか言わない広告コピー
広告コピーは、短い文で伝えなければいけないので、全てを説明することができません。
ですから、どうしても読み手の想像に委ねてしまう…悪く言えば思い込みに期待してしまうことが多々あります。
豊か、という言葉は僕も好きですが、何がどのぐらいどうなったら豊かなのかは、人それぞれです。
品質にこだわる、というのも、もちろんいいことですが、何の品質がどのぐらいだったらいいのかは、さっぱりわからないのです。
こうしてみていくと、上記の手垢言葉リストのほとんどは、なんとなく雰囲気を言っているだけなのです。

かつて、「エモい」という言葉が流行ったとき、意味がわからない、という感じの年配者が多かったようです(という決めつけもよくないけど)。
「ヤバい」も、同じような受け止められ方かもしれません。
「エモい」や「ヤバい」がわからないオッサンたちも「豊か」とか「丁寧」とかは使ってしまいます。
どっちも、雰囲気はわかるけど、それを広告に使われても、自分にとってどのぐらいいいことなのかはわかりませんね。
「手垢言葉」を「言いたいこと」から「知りたいこと」へ
手垢言葉の代表格、「地域密着」を題材に、昨日紹介したGPTで、キャッチコピーを作ってみました。

うーん、まだGPT側のヒアリングに対してのアウトプットがイマイチですが、「密着」を分解して、お客さん側のメリットに再構成しようとしている、ということはおわかりいただけるでしょうか(「地域」はどっか行っちゃってるけど)。
要するに「言いたいこと」を「知りたいこと」に変換し(ようとし)ているのです。

地域密着、という言葉を使うなら、地域とはどこか、密着とはどのぐらいのことか、それを表現していかないと、いわゆる思考停止ワードになっちゃうんじゃないだろうか…(思考停止ワード、も、思考停止ワードですね)
いつも言っている耳障りのいい言葉こそ、「言いたいこと」であって「知りたいこと」ではないのでは? と疑ってかかろう!
ああ、もう何もかもが疑わしい!

