庭の話ではない『庭の話』

庭の話ではない『庭の話』なる本ですが、庭をやっている人にだって参考になるのです


先日お会いした
ある若いご夫婦

まもなく新築戸建ての
引き渡しで

庭をどうするかは
これからだという。

意見を聞かれた僕は

とにかく樹をいっぱい植えたらいい

とだけ

すると
「手入れが大変じゃないですか〜」
とのおこたえ

手入れが嫌だったら
家なんか建てないほうがいいよ


工務店の方々が思っていても
言えないようなことを
さらっと言ってしまいました。

とはいえ世の中には
建物以外の地面全てを
コンクリートで固めただけ
という家も多く

中には
樹を植えてはいけない
という協定でもあるのか
というぐらいの

ツンツルテン住宅だけが
立ち並ぶ住宅街なんかも
あったりして…

しかし「庭」がないということは
この本を読むと空恐ろしくなったりもして。


『庭の話』(宇野常寛・著/講談社)

本書は『庭の話』だけれど
この本は庭の話が書いている
わけではありません。

もうちょっというと
雑木の庭がどうこうとか
パンジーを植え替えるとかいう
みなさんの想像する庭の話ではない

ここでいう「庭」は
SNSのようなプラットフォーム
(人為的に作られ、誰かが支配する場)
に対する存在としての比喩です。

プラットフォームには
人間しかいないけど
庭には人間外の事物があふれている

人間が介在しなくても
植物や虫や鳥がコミュニケーションを
とっている。

もちろんそこに
人間が介在することもできる。

本書は庭の話ではないけれど
重要な要素として
ジル・クレマンの『動いている庭』
が登場します。

クレマンのいう

できるだけあわせて、なるべく逆らわない

こうしてできていく
「動いている庭」のようなものが

サイバースペースにも実空間にも
必要ではあるまいか

なんていう本なので

作庭技術などは一切登場しませんが
ここでいう「庭」的な場所を
実際の「庭」で実現していくのが

これからの工務店の仕事の取り方
というか社会への「目立ち方」
じゃないかな〜

と痛感しました。

『動いている庭』とあわせて
お勧めです。
(本来のこの本の読み方とは違う気がするけど)

宇野 常寛 (著)
ジル・クレマン (著), 山内 朋樹 (翻訳)